ホルムズ海峡GPSジャミング深刻化
Published
2026-03-22 17:00
Updated
2026-03-22 21:10
ホルムズ海峡周辺で、船舶のGPSやAISに大規模な異常が相次ぎ、船の位置が実際とは全く違う場所に表示されるなど、航行の安全を揺るがす事態が広がっています。世界有数の海上輸送の要所で起きているため、単なる機器トラブルではなく、物流やエネルギー供給にも影響しかねない問題として注目されています。
最近、ホルムズ海峡周辺で船舶のGPSが著しく乱れているというニュースが注目されています。海外の専門サイトなどの情報を整理してみると、現地では一時的な不具合では片づけられない、かなり深刻なレベルの混乱が進んでいるように見えます。
1. 米軍の軍事介入と「電子戦」の開始
今回の混乱の背景には、2026年2月末に始まった米軍・イスラエル軍による対イラン攻撃 「Operation Epic Fury(エピック・フューリー作戦)」 があります。
【抜粋先:Lloyd's List Intelligence】 「2026年2月28日の作戦開始以降、ホルムズ海峡周辺は『海事警告ゾーン』に指定された。米軍によるイラン国内のミサイル拠点への空爆と連動して、この海域では大規模なGNSS(衛星測位システム)への干渉が常態化している。」 参照URL
軍事的な狙いはイラン側のドローンやミサイルの誘導を無力化することにあるようですが、その「電波の応酬」に民間船が完全に巻き込まれている形です。
私が気になったのは、これが単発の戦闘行為ではなく、航行そのものの前提条件を崩してしまっている点です。ホルムズ海峡のような狭く、しかも通航量の多い海域では、「位置が正しく分かる」ということ自体が安全の土台になっています。その土台が崩れると、砲撃やミサイルのような直接的な攻撃がなくても、海上交通全体が不安定化します。つまり今回は、軍事作戦の余波というより、電子戦そのものが民間物流インフラに影響を与える段階に入っているようにも見えます。
2. 被害船舶は1,650隻超、わずか1週間で激増
海事AIを分析しているWindward社のデータを見ると、被害の拡大スピードが顕著です。
【抜粋先:Windward (Maritime AI)】 「2026年3月初旬の1週間だけで、GPS干渉を受けた船舶は55%増加し、累計1,650隻を超えた。もはや単なる妨害(ジャミング)ではなく、偽の信号を送る『スプーフィング』が主流になっている。」 参照URL
ここで重要なのは、被害件数の多さだけでなく、妨害の質が変わっていることだと思います。単純なジャミングであれば「受からない」「位置が取れない」という異常ですが、スプーフィングは「間違った位置を信じ込ませる」ので、見た目には正常に動いているように見える分だけ厄介です。数字が増えているということは、それだけ多くの船が不便を強いられているというだけでなく、現場での判断ミスや監視の混乱が広がっていることを意味しているのではないかと感じます。
しかも1週間で55%増という伸び方は、自然発生的な障害というより、何らかの作戦的・継続的な運用が行われている印象を受けます。もしこれが一時的なピークで終わらず常態化するなら、保険、運賃、航路選定、警備体制など、海運のコスト構造そのものに影響してきそうです。
3. 船が「砂漠」や「空港」にワープする怪現象
GPSの異常は「圏外」になるだけではありません。自分の船が地図上で全く別の場所に表示される「スプーフィング(位置偽装)」が多発しています。
【抜粋先:Inside GNSS】 「ホルムズ海峡を航行中の船舶が、突然イラン国内の空港や原子力発電所、あるいは内陸の砂漠の真ん中に位置しているように表示されるケースが続出している。中には、時速180km(100ノット以上)という物理的にあり得ない速度で移動しているように記録される『ゴースト・スピード』現象も確認された。」 参照URL
これは読んでいてかなり不気味でした。位置情報のエラーというと、多くの人は「少しズレる」程度を想像すると思いますが、実際には空港や砂漠に飛ばされるほど極端な誤表示が起きているわけです。ここまで来ると、単なる測位精度の低下ではなく、「位置情報という概念そのものが信用できなくなる」状態だと感じます。
さらに厄介なのは、こうした異常が地図画面や追跡システム上では一見もっともらしく表示されてしまうことです。人間は表示されているデータを前提に判断するので、誤った座標や速度が“もっともらしい情報”として流通してしまえば、現場だけでなく、港湾当局、海運会社、監視機関など周辺の意思決定まで巻き込んで混乱が広がります。デジタル化された海運の弱点が、かなり露わになっているように思えます。
4. 衝突を覚悟で「信号を切る」船たち
GPSが信頼できないため、自船の位置を隠蔽したり攪乱を避けたりするために、あえて通信を切って走る船が急増しているそうです。
【抜粋先:Hellenic Shipping News】 「紛争開始から2週間で、AIS(自動識別装置)をオフにする『ダークモード』での航行を選択する商船が急増した。視界の悪い中や夜間に互いの位置が正確に把握できない状況での航行は、衝突事故や座礁のリスクを極めて高めている。」 参照URL
ここはかなり象徴的だと思いました。本来、AISは安全のために使うものですが、それを切った方がまだましだと判断されるほど、周辺の電子環境が信用されなくなっているわけです。つまり現場では、「正確な情報が得られない」という段階からさらに進んで、「情報を出すこと自体が危険かもしれない」という判断が生まれていることになります。
これは海上交通の透明性が後退することでもあります。AISが十分に機能しない、あるいは意図的に切られる船が増えると、周囲の船だけでなく、陸上で状況を把握する側も全体像を見失います。そうなると、偶発的な衝突や誤認が起きやすくなり、軍事的緊張とは別の意味で事故リスクが積み上がっていくはずです。見えないこと自体が危険になる、というのが今回の怖さだと思います。
【番外編】他人事ではない?日本国内でも起きている「GPSトラブル」
「GPSの混乱は遠い紛争地だけの話」と思われがちですが、実は日本国内でも、意外な理由でGPS電波が妨害される事例が発生しています。
1. 猟犬用GPS首輪による「違法電波」の摘発
趣味の狩猟で使われる道具が、結果的に強力な「ジャマー」となってしまっていたケースです。
【抜粋先:総務省 東北総合通信局】 「海外規格の『猟犬用GPS首輪』を日本国内で使用し、重要な無線通信を妨害したとして電波法違反で摘発される事例が相次いでいる。これらの未認可機器(技適なし)が発する電波は、日本の業務用無線や衛星測位の帯域を汚染し、通信障害を引き起こすリスクがある。」 参照URL
この事例を見ると、GPSトラブルは必ずしも国家レベルの電子戦だけで起きるものではないことが分かります。むしろ、身近な機器であっても、規格外・未認証の機材が混じるだけで、周囲の無線環境に深刻な影響を与えうるという点が重要です。
紛争地の話と日本国内の摘発事例は規模も背景もまったく違いますが、「測位や通信は目に見えない電波の上に成り立っている」という点では同じです。ふだんは安定して使えているため意識しにくいものの、ルールから外れた機器が持ち込まれるだけでインフラの信頼性が崩れることがある、というのは改めて考えさせられます。
2. 空港周辺に影響を及ぼした「建設現場のカメラ」
意図的ではなくても、日常的な電子機器の不備が深刻なトラブルを引き起こした事例もあります。
【抜粋先:ICAO(国際民間航空機関)報告書】 「2020年、小松空港付近で航空機のGPS受信が断続的に失敗する事案が発生。原因調査の結果、建設現場のクレーンに設置されていたワイヤレスカメラから、技術基準を超えた電波が放出されていたことが判明。一つのカメラが、空の安全を脅かす妨害装置となっていた。」 参照URL
こちらはさらに示唆的で、悪意がなくても重大な干渉が起きうることを示しています。つまりGPSやGNSSの障害は、軍事行動や違法機器だけに限定された特殊な問題ではなく、現代社会のあらゆる場所で起こり得る「脆弱性」でもあるわけです。
とくに航空のように安全余裕を大きく取るべき分野では、原因が小さな機器1つであっても、影響は決して小さくありません。ホルムズ海峡の事例は極端に見えますが、根っこの部分には「社会が衛星測位に依存しすぎている」という共通の問題があるように思います。便利さの裏で、測位インフラが止まったときの代替策をどこまで持てているのか、改めて問われているのかもしれません。
まとめ:ネットで調べてみて分かったこと
今回のホルムズ海峡の混乱は、単なる通信障害ではなく、軍事行動と連動した電子戦の影響が、民間の海上交通や物流インフラにまで及んでいる事例として見るべきなのだろうと思います。問題は「GPSが使えない」という一点ではなく、「誤った位置情報が流通する」「AISを切る船が増える」「周囲が海上交通の全体像を把握しにくくなる」といったかたちで、安全管理そのものが揺らいでいることにあります。
目に見えない電波の干渉だけで、世界の物流を支える要衝がここまで不安定になるというのは、現代社会が衛星測位にどれほど依存しているかをよく示しているように感じます。日本国内の事例を見ても分かる通り、GPSやGNSSは決して万能ではなく、想像以上に繊細な基盤の上に成り立っています。
実際の船舶の動きは「MarineTraffic」などでも確認でき、ホルムズ海峡がどれだけ多くの船に使われている海域なのかが視覚的にも分かります。こうした混乱が今後、原油・LNG輸送、保険料、運賃、さらには私たちの生活コストにまでどのように波及していくのか、引き続き注視していきたいと思います。